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2023.02.09 研究

ゼニゴケを用いて植物ホルモンの役割を証明(大学院理工学研究科 加藤大貴助教)

京都大学大学院生命科学研究科の元大学院生の鈴木秀政博士(現東北大学大学院生命科学研究科特任助教)、加藤大貴博士(現愛媛大学大学院理工学研究科助教)、岩野惠博士、河内孝之教授は、東京理科大学理工学部の西浜竜一教授(元京都大学准教授)と共同で、植物ホルモン・オーキシン※1が、その受容体タンパク質を介した遺伝子発現調節を通して、3次元的な形態の構築に必須の役割を果たす一方で、生存そのものには必須ではないことを明らかにしました。植物体の頂端にある幹細胞を基点として器官を形成する3次元的な発生様式は、陸上植物の共通祖先において獲得されたと考えられており、維管束植物とは分岐したコケ植物でも見られます。今回、遺伝子冗長性が低く、オーキシン受容体遺伝子を1つしかもたないゼニゴケ※2を用いてオーキシン信号伝達を完全に働かないようにしたところ、明確な器官を全くもたない細胞塊が形成されました。これは、この受容体を介したオーキシン信号伝達が形作りに必須の役割をもつことを明瞭に証明すると同時に、ゼニゴケ細胞の生存や増殖には必須ではないという、意外な事実も明らかにした成果となりました。本研究で深まった、植物の最重要ホルモンと言えるオーキシンの機能の理解を通して、今後の陸上植物の発生研究のさらなる発展や、穀物や野菜を含めた種々の植物の器官の形や数などを緻密に制御する技術の開発につながると期待されます。
本成果は2023年2月2日に国際誌「The Plant Cell」オンライン版に掲載されました。

ゼニゴケは、一細胞の胞子から生育する過程で3次元的な形体を構築します。本研究では、ゼニゴケに一つしかない植物ホルモン・オーキシンの受容体遺伝子を破壊すると器官形成できないまま成長することを発見し、オーキシンによる遺伝子発現制御が3次元的な形作りに必須であることを明らかにしました。

※1 オーキシン:植物ホルモンの一つ。主な天然オーキシンは、インドール-3-酢酸。植物の胚発生、根・葉・花などの器官形成、果実の発達、光や重力に対する屈性反応など、植物の成長・発生・環境応答を調節する。
※2 ゼニゴケ:コケ植物苔類に属する(学名 Marchantia polymorpha)。2017 年に全ゲノム配列が解読され、実験室での培養や遺伝子改変が容易などの理由から、新たなモデル植物として注目される。

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