分子のプロジェクトXを始めよう!

分子のプロジェクトXを始めよう!


愛媛大学理学部化学科第10期生(1980年卒業、構造化学研究室)
京都工芸繊維大学繊維学部教授
田嶋邦彦


私が愛媛大学理学部化学科(現在の物質理学科化学系)を卒業して二十余年が過ぎました。当時は、授業科目の約半数が必須科目に指定されていて、それら全てを履修するまで卒業できない厳しいカリキュラムでした。入学当初は高等学校の基礎学力では歯が立たない講義内容に驚き、難解な名物講義では単位を落とした多数の先輩と机を並べたことを鮮明に記憶しています。これらの必須科目は化学者として必要な基礎学力の涵養に不可欠な基礎科目であり、今でも私の研究と教育における基盤となっています。基礎科目とは簡単な内容で、専門科目こそが高度な内容であるとお考えの方も多いでしょうが、むしろ基礎科目の内容を正確に理解することはより困難で、大学で修得すべき内容を含んでいるのです。

私は構造化学研究室で分子構造の美しさに秘められた巧妙な機能性に魅せられて、分子構造と機能に関する研究を続けてきました。今日、分子機能の設計あるいは制御に関する研究は、医学・薬学だけでなく応用物理学に至る広範な分野に広がりつつあります。まさに、21世紀は分子を操る化学者の時代です。皆様とともに、分子機能のプロジェクトXを始めましょう!