松永 奈美<



平成5年3月 数学科卒
平成7年3月 修士課程数学専攻終了
平成11年3月 博士後期課程環境科学専攻終了
博士(理学)取得
松永 奈美


理学部卒業後、大学院の修士・博士(途中にて同大学研究生を1年)を経て、平成11年4月から理化学研究所(平成15年10月より独立行政法人理化学研究所と名称変更)にて、生体力学シミュレーションチームの研究員として仕事をしております。私が担当している研究は直交座標系における血流解析(主に狭窄部をもつ血管や頚動脈における流れの計算)を行っています。
修士課程では、土屋卓也助教授のご指導の下、2次元定常Stokes問題に対する有限要素法に関する研究を行い、博士課程では、Dirichlet問題に対する不等分割を有する有限差分法に関する誤差解析の研究を山本哲朗教授(現在早稲田大学情報学科教授)のご指導の下にて行ってまいりました。特に、Shortley-Weller近似と呼ばれる不等分割における有限差分おける誤差評価と、極座標系におけるラプラシアン作用素と原点における離散化に対するSwartztrauber-Sweet近似に対する誤差評価の研究を行いました。これまでは、これらは打ち切り誤差が対象領域全体において2次精度であること、また、誤差自身も2次精度が知られていましたが、さらに我々の解析により、境界付近ではさらに精度が1次良くなることを数学的に証明し、数値実験にて報告しています。

現在は、血流解析という、形状のみならず、(拍動を伴うという意味で)流体解析の観点からでも境界条件の与え方や現象が非常に複雑な、流体力学の世界で日々研究を続けております。いざ血流解析を行ってみると、数学からの視点と工学からの視点の違いの大きさにかなり戸惑うことも多く、数値計算の難しさを実感しています。

私が現在行っている仕事は、医療画像のピクセル(またはボクセル)データの直交性をそのまま生かして、直交座標系で有限差分法を用いて流体解析を行う研究を続けています。現段階では2次元での解析(狭窄部を有する血流解析)を行っていますが、今後はより複雑な形状に対して血流解析ができるようにしていきたいと考えています。また、数学と工学における観点の違いはかなり大きいと考えており、その部分を埋めていける仕事ができればと思っております。