愛媛大学での40余年を振り返って

愛媛大学での40余年を振り返って

 小玉 豊美


2019年5月登録
先日、東理学同窓会長から会報の原稿執筆依頼をいただき、軽い気持ちでお引き受けしましたが、なかなか筆が進まずクリスマスイブの日に書いています。発行予定は来年2月とのことですから、私はその頃に還暦を迎え、3月には定年退職となります。思い起こせば、昭和52年に愛媛大学に採用されてから、早や42年が経ちました。
東会長には、最初の配属先の教養部化学教室でお世話になり、当時は学生実験の準備などもお手伝いさせていただきました。社会人1年生の私にとって、全てがとても新鮮で得るものがたくさんあり、教員や学生との関わり方、仕事に対する責任感や姿勢も学びました。
その後、理学部に異動になり、地球科学科事務室で5年間、優秀な先生方、ユーモアのある学生達そして理学部事務職員とともに、愛媛大学で一番楽しかったと言える時間を過ごしました。しっかり者の娘が誕生したのもこの頃です。地球科学教室では、教員の流動性が高く、小松元学長や入舩現GRCセンター長他、多数の先生方をお迎えして、さらなる地球科学科の発展に向けての基盤が作られていました。
さて、平成16年4月、国立大学法人化によって、国立大学は大きく変わりました。管理運営は、学長と理事で構成する役員会が大学経営の方針決定から業務管理まですべてに責任を持つという構造になり、教職員に関する人事管理や労務については、それまでの公務員法制から一般の労働法制へと大きく変化しました。身分は公務員から、団体職員になったわけです。
私はと言うと、法人化を工学部総務係長で迎え、本部総務課、国際連携課、人事課、医学部と異動し、再度、理学部とのご縁があって、平成29年4月から理学部事務課長を務めさせていただいております。前職の医学部総務課での2年間は、熊本地震でのDMAT・DPAT派遣、寄附講座設置、ドクターヘリ運航開始、第一種感染症病床施設運用開始、防災・備蓄倉庫の整備などを担当し、対外的にも多くの方々と関わり多忙でしたが、理学部での業務にも役立つ貴重な経験をさせていただきました。
本学は第3期中期目標中期計画において、平成31年4月に理学部、工学部の組織改編を実施することを目標に掲げております。理学部では、平野学部長の指揮の下に、「改組」を合言葉のように平成29年4月から毎週、改組WGにおいて議論をつくし、現行の5学科体制から、分野横断機能とキャリア形成機能を強化した1学科5教育コース3履修プログラムの教育体制に改組することになりました。平成31年度の理学部改組に関する設置審査が終了し、平成30年7月6日に理学部の設置報告書が文部科学省に受理され、現在は平成31年度入学生の受入準備や改組の広報活動に取り組んでいます。
また、もう一つの大きな仕事は、理学部設置50周年記念事業でした。まずは、理学部改組を行っておりましたので、記念誌刊行委員会や記念事業実施委員会の設置が平成29年11月となりました。その頃、平野学部長と加納委員長が、東会長に理学同窓会との共催という形での、理学部設置50周年記念事業のご相談をして、共催が決まった以降は、加納委員長が先頭に立って、理学同窓会とともに、企画調整をされました。
特に予算面では、理学同窓会にご支援をお願いしたところ、理学部の予算事情をお汲み取りくださり、理学同窓会の過分なお心遣いによって、お陰様で50周年記念事業を盛大に実施することができました。また、50周年記念誌も皆様のご協力により、無事に刊行できましたことを大変嬉しく思います。ご寄稿くださった執筆者の皆様に改めて感謝申し上げます。記念誌は残部がございますのでご希望の方は、理学同窓会事務局までご連絡ください。
11月11日(日)、国際ホテル松山で開催した式典には神野一仁愛媛県副知事、梅岡伸一郎松山市副市長、柳澤康信前愛媛大学長、髙橋祐二愛媛大学校友会会長をはじめ、愛媛大学ステークホルダーの皆様、理学同窓会の皆様、退職教職員等約130人の皆様にご出席いただきました。
  記念講演会では、入舩徹男地球深部ダイナミクス研究センター長が「地球深部科学から超高圧材料科学へ」 ~愛媛で生まれた世界最硬ヒメダイヤとその応用~ と題して講演を行い、歴史を振り返りつつ現在まで積み上げてきた世界レベルの研究の進展をユーモアも交えながら語られました。記念祝賀会では、平野学部長の開会挨拶、小松正幸元愛媛大学長の挨拶に続く鏡開きの後、柳澤前学長に乾杯のご発声をいただきました。理学部卒業生等による琴、尺八、ピアノのアンサンブルや理学部の歴史を綴るスライドの上映などの催しも行われ、理学部設置50周年を祝うに相応しい盛大な会となりました。
さて、記念祝賀会でもご報告いたしましたが、市道拡張工事のため、理学部正門横で、長い年月理学部を見守り続けた3本のソメイヨシノ(推定樹齢50年以上)が、この秋に伐採されました。理学部では、昨年3月末に農学部にご相談をして、5月連休頃から農学部大橋広明先生のご協力をいただき、挿し木や取り木で繁殖を試みています。大橋先生によると順調に発根しており、先月には、取り木した枝に数輪の花が咲いていたそうです。近い将来、この桜の子孫が理学部構内のどこかで復活することを楽しみにしています。
また、宇野理事のご発案によって、伐採された原木を農学部演習林で桜チップにしていただき、記念祝賀会では、袋詰めをご自由にお持ち帰りいただきました。燻製作りは、初めての方でもフライパンなどで簡単に挑戦できるようですが、皆様、いかがだったでしょうか。
大橋先生には、桜の挿し木を快くお引き受けいただき、今夏の猛暑の中何度も足を運んでいただきました。また、桜チップ作りでは関係の皆様に大変お世話になりました。この場をお借りして、御礼申し上げます。
このように、私の愛媛大学での最後の2年間は、理学部改組と50周年記念事業の2つに集約できます。設置審査も記念事業も無事に終わり、関係する皆様に大変感謝しています。そして、40余年間、多くの貴重な経験をさせていただいた愛媛大学にも感謝の気持ちでいっぱいです。
さて、退職後の私の進路ですが、周囲から働けるうちは働いた方がいいよ。税金くらいは働かなくちゃ! ずっと働き続けたんだから、しばらく休んだらいいよ。もう仕事しなくて、いいんじゃない。エトセトラ。これまでの私は、定年退職を心待ちにして、再雇用は全く考えてもなかったですが、ここにきて、周囲も私も、ざわざわしている今日この頃です。
最後に、ご指導いただいた諸先輩やこれまでお世話になった皆様に改めて御礼を申し上げるとともに、皆様の益々のご健勝とご活躍、理学同窓会の更なるご発展を心よりお祈り申し上げます。