「退職に際しての感想等」

「退職に際しての感想等」


愛媛大学理学部事務課長
長谷川 広武

 私は、今年度で愛媛大学を定年退職することになりますが、遠山先生から理学同窓会報(第6号)を発行するので退職に当たり、何か原稿を書いてほしいとの依頼を受けました。私自身、同窓会の会員でなかったため、少し躊躇しましたが、「退職に際しての感想等」で良いということでしたので、普段から思っていることや感じていることなどを書かせていただきました。

 「子年」生まれの私は、今年で5巡目の年男となり、還暦を迎えました。気持ちはいつまでも若いつもりでしたが、身体の方は確実に年を取っているようです。以前は、体を動かすことが好きで、いろいろなスポーツをしてきましたが、10数年前から頑固な腰痛に悩まされ、長い間、体を動かすのに不自由を感じておりました。でも、この年になると今の身体に対し、良く動いているなあと、感謝の気持ちが持てるようになりました。あるできごとから、歩ける間にできるだけ歩こうと決心して、3年前から毎朝4キロ程度を「日々新たに」と「感謝」の気持ちを持ちながら歩いています。今では、松山から東京間を十分往復できる距離まで歩き続けることができています。

 話は変わりますが、国立大学は、平成16年度から、百年に一度あるかないかの大改革と言われている独立法人化の制度が導入されました。今の時代にあっては、避けて通ることのできないことかもしれませんが、市場原理が取り入れられたこの制度は、基礎科学を対象とする分野にとって大変厳しいものとなっています。近い将来、この制度が大幅に修正されなければ、本当に大切な分野が衰退し、我が国は没落していくように思います。

 また、今の日本は、成果のみが重視され、結果よければ全てよしとの感が強く、プロセスを大切にされないことや地道に努力をする者が格好悪いものとして軽んじられる傾向にあります。これらのことが、現在の閉塞感や行き詰まり感を強くしている大きな原因ではないかと思います。このような中にあって、基礎基本を重視し、土台のしっかりした、奥行きがあり、応用力のある人材の育成を目的としている理学教育は、将来、社会の流れを大きく変えていく力を持っているように感じます。

 それから、今年は本当に嬉しいことがありました。日本人がノーベル賞を4人も受賞し、それも全て基礎分野の科学者でした。これを契機に、この分野の重要性が早く再認識されることを期待しております。

とりとめのないことを書きましたが、基礎分野がますます発展することを心待ちしているうちの一人です。


2009年1月31日登録